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東芝デジタルソリューションズ株式会社

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Vol.31 ビジネスと、その進化をとめない マネージドサービスが創造する新しい世界

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#02 自動車開発を加速する、CPSへの挑戦 「分散・連成シミュレーションプラットフォーム」 東芝デジタルソリューションズ株式会社 千々谷 眞英, 荒木 大

サイバーフィジカルシステム(CPS*)の実用化に取り組んでいる東芝デジタルソリューションズは、開発競争が激化する自動車業界に対して革新的なソリューションを提供しています。自動車メーカーや自動車部品メーカー(サプライヤー)で普及が進んでいるモデルベース開発をさらに進化させ、自動車の「デジタル試作」を、企業の枠を超えて共同で実施するための「分散・連成シミュレーションプラットフォーム」です。自動運転や先進運転支援システムに代表される大規模で複雑な車載システムのモデル連成テストや評価を、サイバー空間で実施。自動車部品を開発する現場において、設計への手戻りをなくし、品質の改善や生産性の劇的な向上を図る、まさに車載システム開発におけるデジタルツインです。ここでは、多くのサプライヤーの利便性を高めるためマネージドサービスでの提供に取り組んでいる、この革新的なプラットフォームについてご紹介します。

CPS:Cyber Physical Systems

モデルベース開発の急速な普及

近年、自動運転や先進運転支援システム(ADAS*)といった、自動車の走行を支援する各種機能を制御する電子制御ユニット(ECU*)の数の増加とともに、制御ソフトウェアは大規模化と複雑化の一途をたどっています。「走る」「曲がる」「止まる」という自動車本来の機能を制御するため、エンジンやアクセル、ブレーキといった自動車部品には制御ソフトウェアが搭載されており、これらは年々高性能化し、高機能化しています。

ADAS:Advanced Driver Assistance System,ECU:Electric Control Unit

国の調査によると、自動車を構成する部品の中で電子部品が占める割合は、直近の10年で2倍に拡大。搭載するソフトウェアは、2000年ごろには100万行程度だったソースコードが、現在は1億行以上に増大したというデータがあります。開発するべき部品とソフトウェアが肥大化する一方で、サプライヤーである自動車部品メーカーには、品質を維持しながら納期を短縮することが求められています。

そこで、自動車の開発において急速に普及してきたのが「モデルベース開発(MBD*)」です。現実世界の現象を表した数理モデルを使い、コンピューター上(仮想空間)でシミュレーションして製品を開発する手法であり、サイバーフィジカルシステム(CPS)におけるデジタルツインを体現したものともいえます。製品の仕様を検討する段階からモデルを使ってシミュレーションを繰り返し、その結果をフィードバックして各工程を改善するモデルベース開発には、現実世界と仮想空間をより近づけることで、実車や実機を使ったかのようにスピーディーかつ正確に性能評価を行うことができるという利点があります。

MBD:Model Based Development

従来は、自動車部品の仕様書を基に、制御ソフトウェアの構造設計、モジュール設計、詳細設計という工程を経てからコーディングし、仕様どおりに正常に動作するかどうかを実機でテストしていましたが、モデルベース開発ではシミュレーションであらかじめ十分に動作を確認したモデルを基に、制御ソフトウェアを自動的に生成します。その結果、開発速度が劇的に向上し、仕様の誤解や見落とし、実装の間違いといった人的ミスを減らすことにもつながりました。コストの増大を抑えながら品質を安定させる手段として広く活用されています。

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モデルベース開発の限界を超える

千々谷 眞英

しかし高度に電子化された車載システムでは、個々の自動車部品の信頼性が、自動車全体の信頼性に影響を及ぼします。部品単体では仕様どおりに動くことが確認できていても、部品を全てつないで実車に搭載して走行してみると、運転パターンや路面の状態、ボディーの構造、車体の重量、部品の特性といったさまざまな要因から予期しない結果がしばしば発生します。

また、エンジンやパワートレイン、シャシーに加え、自動運転やADAS、外部ネットワークとの連携が必要なコネクテッド機能などの高度で複雑な機能は、総合的なテストを多く行う必要があります。自動車を量産できる最適な状態に仕上げるため、実車でのテスト走行に多くの時間が割かれています。このような開発の最終段階で不具合が見つかってしまうと、設計の工程へ手戻りせざるを得ません。

もし、自動車メーカーとサプライヤーのそれぞれが担当する自動車部品のモデルを、仮想空間でひとつにつないで実現する「デジタル試作」を、開発の途中段階から各社共同で行うことができれば、こうした問題の多くが、実機や実車を使ったテストを行う前に解決できるでしょう。

しかし、開発の途中段階のモデルを一カ所に集めることにはいくつかの課題があります。モデルは各社の機密が詰まった設計情報であるため、秘匿性の担保が必要です。また、多くのモデルをつなぐ、モデルを交換するといった作業には手間と工数がかかります。さらには、全てのモデルをつないでシミュレーションを行う際、一台のシミュレーターでは能力が不足する危険性が高まります(図1)。

図1 自動車開発の将来像

そこで、東芝デジタルソリューションズが開発したのが、「分散・連成シミュレーションプラットフォーム」です。

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実車テストを最小化し、開発工数を削減

荒木 大

分散・連成シミュレーションプラットフォームは、各社が開発したさまざまなモデルを仮想空間でつなぎ、統合的にテストするための環境です。

機密な設計情報であるモデルは、集めません。モデルは自社内に置いたまま、各社のシミュレーションツール同士を接続し、他社とはモデルの動作情報(データ)のみを共有します。テストと評価に必要なデータをネットワーク上で共有することによって、離れた拠点間でも快適に各社共同でテストを行うことが可能です。マスワークス社のMATLAB®/Simulink®をはじめ、市販されている多くのシミュレーションツールを相互に接続することができます。

車両の通信仕様書を基に、各社のモデルをつなぎ合わせるブリッジを自動的に生成し、モデルをワンクリックで接続できる仕組みを実現することにより、モデルをつなぐ、モデルを交換するという作業に手間がかかりません。分散・連成シミュレーションの際に、モデル間のデータ通信を行う仮想通信バスには、既に多くの利用実績がある当社の車載ネットワークシミュレーター「Venet(ベネット)」を採用しました。Venetは、車載通信プロトコルの業界標準であるCAN*を正確に模擬しているため、実車におけるECU間でのデータ通信の振る舞いや、車載ネットワークの負荷、スループットなどを高い精度で評価することができます。

CAN:Controller Area Network

また、一台のシミュレーターですべてを実行するのではなく、複数台のシミュレーターを使って分散・並列環境にすることが可能です。コンピューターのパワーやメモリなどのリソースを気にせず、高速で大規模なシミュレーションが実行できるようになり、「データが重くてシステムが止まる」「シミュレーションが実行できない」といったトラブルの心配がありません。さらに、クラウドを活用した分散・並列シミュレーションも可能。離れた拠点にある各社のシミュレーターとモデルを、そのままLANで接続してつなぐより、クラウドにアップロードしてセキュアな状態でつなぐことで、より高速なシミュレーションが行えるようになります(図2)。

図2 分散・連成シミュレーションプラットフォームの特長

これまで自社内や限られた環境の中だけで行われていたモデルベース開発を、自動車メーカーとサプライヤーの間での共同設計や共同評価にまで拡大・進化させる「分散・連成シミュレーションプラットフォーム」。フィジカルとサイバーを高度に融合した、当社の経験とノウハウが詰まったソリューションです。

自動車メーカーとサプライヤーをつないだデジタル試作で、車載システム開発におけるCPSを実現する分散・連成シミュレーションプラットフォームは、自動車業界内で着目されており、自動車制御システムの開発力強化を求めるお客さまに必須のプラットフォームとして成長していく手応えを感じています。

今後はモデルベース開発や分散・連成シミュレーションにおいてクラウドの活用が主流になっていくと確信しており、自動車メーカーと多くのサプライヤーとをつなぐ最適な形でその運用環境を提供できるようマネージドサービス化に取り組んでいます。

安全性、快適性、高性能を追求し続ける自動車業界に対し、一層の貢献とサポートに力を入れていきます。

※MATLABおよびSimulinkは、マスワークス社の米国およびその他の国における登録商標または商標です。
※この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2019年10月現在のものです。

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